Side T SS

【覚】2009.08.04

頬を何かが掠めた。
爪が当たったのか、指が当たったのかはわからなかった。
意図的な攻撃ではあるけれど、傷つけることが目的でもない。
じゃれ方の下手な猫が、爪をしまうのを忘れただけだ。
身構えるわけでもなければ、逃げ出すわけでもない。

「これくらいだろ」
「そうね」

これは、遊び、だ。
お互いの溝を埋めるには、共通の話題が必要だというじゃないか。
だから、ルールは作っておこう。

「急所はなしね」
「そうだ、な」

お互い、そんなところも似ているらしい。



どこまでやっても死にゃしないという安心感が
釘バットという暴挙を生んだとも読めるな、これ