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ハクシュ/その6−2


たどり着いたのはウィークリーマンションの、一階角部屋。
「ついた」
玄関の前で電話をかけてオートロックを解除させると、部屋の前でもう一度綾那は電話をかけた。

「どちらさま」
「お前、顔知ってるんじゃないかなー」
「誰?」

そわそわと落ちつかない順の隣で、ぼんやりと綾那はドアを見つめている。
まだ酒が残っているのか、動きも緩慢だ。どちらかというと寝ぼけている。

「おまたせー」

玄関が開いて、顔をだした人をみて、順は首をかしげた。

どこかで、会った気がする。
どこかで、見たことがある気がする。
誰だっけ?

伺うように綾那を見たが、相変わらずぼんやりとしたままだった。

「部屋貸して」
「お金とるよ」
「いーよ あ、これ、今日買った」
「…ごまかそうとしてないか?」
「してる」

手に持ったゲームショップの袋を押し付けて、その手をそのまま差し出している。

「眠そうだねぇ」
「寝てた、さっきまで」

綾那は鍵を受け取ると部屋番号だけ確かめてすぐに歩き出した。

「ぇ、え?」
「あー、君はこっち」

ひじを掴まれて、部屋に引きずり込まれた。