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ハクシュ/その6−5


無修正な映像も延々と見続けると感覚が麻痺するらしい。
言われるまま、編集ソフトの操作繰り返しているうちに、感覚でわかるようになってきた。
指示が出る前に、作業ができる。

「うん、数、見てるね」
「褒められてる?」
「褒めてるよ」

明日起きられるかなぁと頭の隅に思いついたけれど、作業はいつまでも終りが見えない。
中古とはいえ、初めて手に入れたゲームを持っていたし、放っておいても勝手に遊んでいるだろう人のことをようやく思い出した。
酒というのはとことん気を大きくするらしい。

「明日、起きられるかな」
「まぁ、待ってるだろうね」

この人は。
すぐ横に座っている人を見た。自分がひどく渋い顔をしているのがわかる。

「うん、素直になってきた」
「いじめられてます?」
「違うよ、遊んでる」

素直じゃない子たちだねぇ

そういわれて、ふてくされてみても勝ち目はないようだった。
実際、ふてくされていることが顔に出ただけで完敗だ。

「正直、驚いてたんだ」

突然言われて、首を傾げるしかなかった。
何を?と順が尋ねる前に、答えが返ってきた。

「綾那の口から友だちと行くなんて、聞くことないと思ってた。うちに来るとも思ってなかった」

納得して、苦笑いする。
誰でも同じことを思うらしい。

「あてがあるって、いわれるとも思わなかった。歩いて帰るつもりだった」
「そーだろーね」

笑いながら、順も同じことを言った。

「いい、傾向だ」
「うん」

素直に、うなずけた。

「そろそろ、終わろうか」
「ぁい」
「着替え、適当に持ってっていーよ」
「うん」

指差されたクローゼットに向かおうと立ち上がる。

「あ、あとね」
「うん」
「テキトーに持って行っていいよ、小道具」
「こどーぐ…小道具っっ!?」
「必要ならどうぞ」
「ぇーっと…」

振り返ってみたら、背中が震えていた。
手近にあった空き缶を、思わず投げつけていた。