Side T SS
断片/003
そんなものを期待してはいけない。
事実、なかった。
そんなものがあったら、天変地異の前触れだ。
きっと実家の御家(おんや)が地震で潰れる。
それくらい、あっちゃいけない。
で、何にもないまま今に至る。
あんまりしつこかったので、クラスメイトに言ったら「それでいいの?」と聞かれたけれど、そういうヤツなんだから仕方がない。
どうせあの子には誰だかばれてる。
そういう拗ねまくったオーラには過敏に反応してくださるので、不機嫌極まりない視線がほんの10センチくらい後ろから、後ろ頭をちくちくと刺していた。
それが今の状況。
何があった、とか、どうした?なんてやさしい言葉がかけてもらえる訳もなく
「うっとおしい。そのままここにいるなら上へ帰れ」
これだよ。
うん、これが正しい。
「べーつにー」
枕と肩の隙間に挟まった腕を左手の人差し指で手のひらまでなぞってみるけど、案外に無反応。
つまらない。
膝を抱えるみたいにして体を丸めたら、頭のてっぺんをべしべし叩かれた。
叩いていた手が頭を掴んで、今度はそのまま髪をぐしゃぐしゃにされる。
…うん。
髪を乱していた手が止まってから、体を伸ばした。
顔を見ないようにして体の向きを変えた。
布団にもぐりこんだら、さっきまでイロイロやらかしてくれていた手が体を抱えてくれた。
体を起こそうかとも思ったけど、今日はこれでいいや。
「寝る」
「ん」
短い返事の後に明かりが消えた。