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断片/006

あの2人はよく似ていた。
負けず嫌いで、わがままで、案外に融通が利かなくて、頑固で、臆病。
マイペースで、周りを振り回していることに気付かない。
自分のペースを乱されると、振り回された気になって急に不機嫌になる。
あまりに似すぎている気がして、扱いやすいかと思っていたら、そうでもなかった。
扱いやすさを演出してみせて、自分のペースは崩さない。
正直、厄介。
多分、同じことを考えている。
そんな気がした。

ふたりとも、よく似ていた。
負けず嫌いで、マイペース。
頑固で、融通が利かなくて、気を使いすぎて失敗する。
臆病なのは、性分に気付いているせい。
厄介なのは、全部顔に出る、態度に出る、行動に出る。
わかりやすいのに、自分だけ気付かない。
ぶつかって当然。ケンカになって当然。

どつきあいを通り越した殴り合いと罵りあい。
女子校の廊下で、日常的に繰り返される光景でもないような気もするけれど、たぶん2人とも他に方法を知らないだけだ。

「毎日毎日、本当によくやるわ」
「ケンカするほど、仲がいい…ってこういう意味だったっけ?」
「ちょっと違う気がするわね」
「あ、沈んだ」
「じゃ、部活行こうかな」

それぞれを起き上がらせて歩けることを確かめる。
お互いがお互いのダメージをかばいながら、それでもきっと部屋に帰るまで怒鳴りあいは続くんだろう。
だから、もう、心配はしなくていい。
手加減なしで殴り合っても無事でいてくれる、頑丈なケンカ友だちをお互いようやく手に入れた。


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