Side T SS

断片/012

ゲームのキリがついているときは、付き合ってくれる、ということはすぐに覚えた。
難しいのはそのタイミングで、終わったと思ったら、すでに別のソフトが脇に控えていたなんてことは珍しくない。
それでも時々、二人で出かけるようにはなっていたし、DSやらPSPやら持参なら、散歩くらいは付き合ってくれた。
ただし、どこかに座れる目的地が必要で、帰る時間は指定できない。

ゲームから顔を上げないのをいいことに、快速電車をいくつか乗り継いだ。
目的があるわけではない。
ただ、流れる景色が気に入った。

「どこ行くんだ」
「さぁ…これ、どこ行くの?」
「私が知るか」
「あはは だよねー」

乗り換えに30分ばかりあったので、ホームから入れる喫茶店で軽く昼食を取った。
古くてひなびた駅に綾那は眉をひそめたけれど、文句は言わなかった。

「どっかで降りて、歩こーか」
「どこへ」
「さぁ…」
「そればっかだな」
「そーだね」

終着駅まで行って、単線に乗り換えた。
2両編成で、隣の車両に女性の老人が一人座っていた。

「1時間な」

不意に綾那が言った。

「そこで折り返さないと、たぶん、帰れない」
「よく見てたね」
「さっき終わった」

そう言って、閉じたDSをかざして見せた。

「この先、花見の名所があるんだと」
「…よく見てたね」
「今度は、春だな」
「アンタが引きこもってなければね」
「そうだな」

停まった駅で降りた。
折り返してくる電車を1時間待って、帰路についた。


>>かきかけ